御家庭の幸せを願う印鑑『吉相印』

　　　拒食症の女性が増えていますが、進んだ医学でも適切な治療法が見つかってい ないようです。マーフィー博士が拒食症の女性を扱った興味深い実例があります。　 実の娘が突然食事をとらなくなり、みるみるやせていくのを心配した父親がマーフ ィー博士に相談しました。 　博士は、娘に会わせてくれるようにと言いました。　二人きりで会ったときに博 士はこう切り出しました。　「君はお父さんを困らせようとしているね」 「君はお父さんを困らせようとしているね」 　「そうなの、仕返ししてやるのよ」 　　彼女の母親は彼女を生むとすぐに亡くなったのです。　男の子を望んでいた父親 は、再婚して男の子をさずかりました。　当然、父親の愛は弟に向けられ、彼女は そのことを恨みに思っていたのです。　博士は彼女に言いました。 　「今君がやろうとしていることは、自分自身を傷つける行為で父親には何の責任も ない。　だから、このままやせ衰えてひどい病気になっても、君の目的は達せられ ないよ」　「そんなことはないわ。お父さんは現に因っているようだし」 　「たしかに困っている。しかし問題の解決には少しもならない。それに一番困るの は君自身なんだよ」 　彼女は激しく泣き出しました。　ひとしきり泣くと、昼食をたっぷりと食べ、以 後は拒食症から立ち直ったのです。　博士がこの娘さんの気持ちを父親に伝える と、父親は娘に冷たかった自分を認め、娘に謝罪しました。　博士は言います。 　「娘さんが本当に求めていたのは父親の愛なのです。　彼女は愛され、大事にさ れ、必要な存在であることを確信したかった。　それに父親が気づいたとき、彼 女の心は満たされたのです」 　拒食症はほかの何か大きな欠如感への代替行為と考えられます。　従って、それ が何であるかがわかれば解決します。　医学的な対応だけで治そうとするのは無 理があります。　拒食症の治療には愛を注ぐことが最もよい処方箋と言えます。 　その愛の欠乏こそが拒食症の目的だからです。　緩慢な自殺が拒食症であり、そ れを止めるのは愛しかないのです。